本焼き1

 7月6日 午後6時15分より本焼きを開始しました。中途半端な時間です。

 前項でも書きましたが、この日の朝も5時から、釉掛けの残りをして、窯の口を閉めて、食料等の調達をしてと、準備を行ったわけですが、それでも、いろいろのことがぎりぎりとなり、ロストルの前に薪を並べ、略式ながら窯の神様に祈り、御神酒を上げたあと着火、確認したら15分でしたというわけです。

 梅雨の最後かもしれない大量の雨で、湿気ており、いつものように一回で火がつくというわけには行かなかったのも切りの悪い時間での開始となった次第です。

 窯焚きの最初の段階は「あぶり」とよばれ、窯全体の湿気を抜き、ゆっくりと温度を上昇させます。私の窯の温度計の位置は、一番火後(炎の通り方で煙突への出口に近い方)に、設置してあります。従って窯の中の一番低い温度の測定値です。それが、100度に上昇したということは、作品の中の水分のうち、結晶水でないものはみんな蒸発するということで、これを急激にしてしまうと水蒸気爆発が起こります。すなわち、作品が「割れる」ことになります。また、窯の壁の温度上昇も熱伝導でおこるので、あまり偏った温度の上がり方をすれば壁にひずみがでて、割れてしまいます。だから、あぶりでは、根気よく、ゆっくりと上げる事が望まれます。私は、1時間に15度上昇、6時間で90度上昇させてだいたい夜中の12時に100度を超すように焚いています。

 また、この時間は、焚き口の下のロストルの口で燃やしています。焚き口が冷えていると、温度が上がりにくいし、冷たい空気が入るから一番外から焚くのだと聞いています。ロストルそのものへ薪を詰めるのでなく、その外側へたき火をするように薪を細かく割ったものを組んでいき、そこへ火をつけて、徐々にロストルの口に近づけながらデジタルメーターを時々見つつ、寝てしまわないようゆっくり焙っていきます。

 言い忘れておりましたが、最近は、記録を一切つけていません。記憶とイメージで焚いています。計画はおおまかなもので、それを時間あたりに直して、理想の温度に近づけてあげています。

 「あぶり」の最終段階になりますと、ロストルの口で燃やした火の炎がロストルの隙間から燃焼室の中へとあがって参ります。それが100度前後の頃です。夜中の12時をすぎると、こんどは、焚き口から薪を少しづつ投げ込み始めます。「せめ」に移ったわけですが、特に意識しなくても、焚き口から広い燃焼室に入った薪は勢いよく燃えますので、自然に温度は1時間に50度前後上がるようになります。これをダンパーという、煙突への空気の流れを調節する仕切り板とロストルの口を煉瓦で閉じることにより、燃焼効率を変えて調節します。薪の投入は、体力も考え、15分に1回にしています。この間に燃え尽きてしまわないようにするには、たくさんの薪を入れなくてはなりません。すると、温度も急上昇してしまいます。これは、いい状態ではないので、空気の流れを調節して、燃え方が悪い状態となり、15分で12.5度あがり、薪の投入量も必要最低限ですむようにします。熱が煙突から外へでてしまっても意味がないですから。

 なお、薪を燃やすと黒い煙がでておりいろいろ心配されますが、煤(炭素)と二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素がその成分です。石油を燃やしているのとは違うので、燃焼効率の悪いときの煙も車の排気ガスより大丈夫と思いますよ。

 こうして、朝の6時を迎える頃には、400度を超しています。今回もそうでした。携帯電話の時代になったので、家から離れた窯場にいても常設の電話が無くてもいろいろ連絡を取りつつ、焚けるようになりました。以下2に続く。

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